六股な元ワイフ9
2020年 02月 19日
第9話 東京のセフレ第1号との初エッチ
翌日。
正美は「あのオモチャ」の広告が掲載されるページの開いたレディースコミックを食卓の上にさりげなく置いてから隆よりも先にアパートを出た。
正美の目論見はもちろんこうだ、
さあて、あの野郎は予想に反して変態みたいだから、このオモチャの広告に目を止めるだろうよ。見たら、早速、買ってくると思うのだが、どうなりますことやら? ウッヒッヒ ・・・
隆がアパートに帰ってきた。正美は先に帰宅している。
「ただいまー!」
「あっ、タカちゃん、お帰り!」
「今日は、楽しいお土産を買ってきたよん!」
「あら、何かしら?」
「エヘヘ、これだよ!」
「えっ、何これ? 何に使うものなのよ?」
もちろん、正美はすっとぼけている。
「紳士淑女のオモチャだよ。気持ち良くなるオモチャね、ウィーンってね」
「いやらしいわね。どうして買って来たの?」
「マーちゃんが読んでいるレディースコミックの広告で見たんだ」
「えーっ! そんないやらしい広告なんかあったかな?」
「あるのだよな~、それが」
いとも簡単に正美の思惑通りになった隆の有様を目にしながら、正美は「そんな広告くらい普通はあるよね。でも、このままカマトトを決め込むとするか」とか思うのだった。
しかし、正美のそんな思惑など知る由もない隆はいたって無邪気だ。
「ねえ、マーちゃん、今夜、早速、使ってみようよ!」
「タカちゃんは、いつの間に変態になったの? 知らないわよ」
とか言いながらも正美の心中はこうだ、
ヘッヘッヘ、上手く行ったぜ! これで隆の下手糞な指技から解放されるわね。このオモチャと隆の包茎手術の跡のイボイボがあれば、野口吾郎とエッチするまでのつなぎになると思うのだよね。つまりは計画通りだね。やはり、隆のようなアホは扱いやすいな。ウチも我ながらワルだよね、ヒッヒッヒ。
その夜、正美は、隆のナニとそのオモチャで十分に満足した。特にオモチャの効果が絶大だった。
十日後。
夫、隆が長期出張で中東へと発った。三ヶ月も帰ってこない。隆が日本を発った週の日曜日、野口吾郎が隆と正美のアパートを隆の不在を承知の上で訪れた。訪問の目的は、もちろん、ナニに決まっている。
野口吾郎がアパートの部屋に入るや否や、二人は、息の合った相撲の立会いのように、さっと抱き合った。挨拶も茶もまだだというのに。風呂にも入っていないというのに。
二人はまるで手品のように手際よく互いを脱衣させた。二人がマッパになるまでに一分もかからなかった。姿勢を変えるときでも二人の息はぴったりで、初対戦とはとても思えない身のこなしだ。その上、二人とも、ことナニについては、身体が驚くほど柔らかく、どのような体勢でも、どのような方向でも、どのような角度でも思いのままだ。
正美は、そんな吾郎のことを心の中で絶賛するのだった。
うわーっ! 上手いなあ! オモチャと包茎手術のイボイボとでやっと一人前の隆とは月とスッポンだわ。下手な相手と卓球をすると、こっちまで下手くそになったような気がするけど、吾郎が相手だと技を存分に繰り出せるな。それにしても吾郎の技は見事だな、それに吾郎は強い!
吾郎は背が高くて手足が長いから、どのような姿勢でも手が気持ちのいいところに届くのよね。その上、ベロも長い。これならアソコの一番奥まででも届きそうだな。それに、姿勢を変えるにしても、こちらにピッタリと合わせてくるしね。
こっちが頭を相手の下腹のところに持って行こうとすると、相手もこっちの下腹のところに頭を持ってくる。その間、一秒もかからない。見事だ! こちらの意思をテレパシーで察知しているかのようだよ。もちろん気持ちいいのだが、小気味良いという意味でも気持ちがいい。ダブルで気持ちいい。どうやら、この吾郎は、我が家に来て早々、駆けつけ三杯よろしく一気に三回とか行ってしまいそうだな、凄いよ! ・・・ うわあ、ほんとに三回行っちゃった。一時間もかかっていないよ、新記録だわ!
「ふうっ」と吾郎は息をついた。
そこで、正美は休憩することにした。
「ねえ、吾郎、この辺でお茶にしようか?」
「いいね」
「でさ、お茶の後も出来そう?」
「うん、楽勝だよ!」
「次も三回くらい出来そう?」
「うん、次のセットでも、とりあえず三回ね。その次のことは、また休憩してから考えようよ」
「わかったわ」
正美が紅茶をいれて二人で飲み始めると ・・・
吾郎が正美の夫、隆のことを気にした。
「御主人、出張でしょ。どこに行っているの?」
「サウジアラビアのリヤドよ」
「ふーん、サウジアラビアか。ということは砂漠か。なら、今頃、『みず、みずー!』とか言っているのかな?」
「フフッ、まさか。サウジアラビアのリヤドは都会よ、首都だからね。ミネラルウォーターくらい、どこでも買えると言っていたわよ。『みず、みずー!』なんて言っているわけがないでしょ」
そのサウジアラビアでは、
「みず、みず、みず~!」
隆は砂漠のど真ん中で立ち往生している。
乗ってきた車がエンストで止まってしまったのだ。
しかし、隆のドライバーを務めるサイードという男はいたって冷静だ。
「ミスター・ハマノが後先考えずに水を飲んでしまうからだよ。俺の水が残っているから少し分けてやろうか?」
浜野隆は、工事完了証明書にプロジェクトエンジニアの署名を貰うため、サウジアラビアの首都、リヤドから二百キロ離れたニフィという現場に向かっていた。その道中で車が故障して砂漠のど真ん中で立ち往生することになってしまったのだった。
浜野隆の運転手、サイードは、エリトリア解放戦線人民解放軍の兵士だった。エリトリア人から見ればエリトリアの独立のために戦う勇士なのだが、エチオピア政府から見れば反政府ゲリラだ。テロリストとも言える。そのサイードは政府の正規軍に追い詰められて、サウジアラビアに亡命した。そして、今は、浜野隆の会社のリヤド事務所のドライバーをしている。
つまり、正美の夫、隆は、今、そのサイードという反政府ゲリラと二人で砂漠のど真ん中で立ち往生しているというわけだ。幹線道路から脇に逸れた工事車両専用の道路なので、トラックなど工事用の車両しか通らない。しかも、工事が終了しているので、もう六時間も他の車が通らない。他の車が通りかかる見込みもない。だから、救助のあてなどない。ちなみに、今は一九八三年なので携帯電話などない。
隆は途方に暮れるとともに落ち着かない。それでも、サイードからの水の提供の申し出を断った。
「それはサイードの水だろ。だったら、要らないよ。ところで、サイードって、反政府ゲリラだったのだろ?」
「ゲリラなんかじゃないよ。エリトリア解放戦線人民解放軍の兵士だよ」
「あっそう。で、自動小銃とか撃ったことあるの?」
「いくらでもあるよ」
「じゃあ、何人くらい殺したの?」
隆の軽薄な質問に対し、サイードは急に殺気立った目つきになって返答した。
「それは聞かない方がいいぞ」
隆はサイードの殺気立った目つきに少し怖気づいた。
「そ、そうか、聞かない方がいいくらい殺したのか、じゃあ聞かないよ」
「無駄話なんかしていないで、寝た方がいいぞ、体力を消耗しちまうぞ」
「うん、そうだね。あーあ、それにしても喉が渇いたな、日本に帰りたーい!!!」
同じ頃、隆と正美の横浜のアパートでは、
「あれっ? 今、夫の声が聴こえたような ・・・」
正美は、夫、隆の声が聴こえたような気がした。
しかし、吾郎は取り合わない。
「それは、やましいことをしているからだろ。だったら、やましいついでに、次の三回とか行ってみようか?」
「うんっ、行ってみよ~!」
結局その日、二人は十二回という野球の延長戦のような回数のナニをやり遂げた。
【続く】