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患者は作るもby悪徳医師12(終)

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第12話(最終話) 2つの約束

 優美の奴、一体どうしてしまったのだよ?

 俺様が発作を起こして死にそうだというのに救急車を呼ぶフリだけして、その実、呼ばなかった。

 そこで、呼んでくれと頼んでも「意識を失って、しばらくしてから呼ぶ」と言いやがる。何故かと問えば「死んでもらうから」だとさ。

 他にも、わけのわからないことを言いよる。「ジャスミン茶で始まったのだから、ジャスミン茶で終わる」とか、「復讐ではない」とか、「お母さんと約束をしたから死んでもらう」とか ・・・

 そして、優美がその母親と交わした2つの約束について、これから説明すると言う。

 そんなもの、この瀕死のときに誰が聞きたい? しかし、俺様は、今や身動きできない。

 ただ、ただ、胸に激痛が走り、息がほとんどできない。

 自分の身体から血の気が失せるのが自分でもわかる。どう考えても、俺様は間もなく死ぬ。

 いくら金満インチキ医師の俺様にだって、それくらいはわかる。

 これだって、一応は、医師国家試験に合格したのだ。そりゃあ、多少のズルはしたがな。

 それでも、親父の病院で医師としての修行を積んだ。

 だから、わかる。俺様はもうすぐ死ぬ。そんなときに優美の話なんかに興味はない。

 それでも、身動きできない以上、今は聞かざるを得ない。他に出来ることなどない。

 よし、いいだろう。冥途の土産に聞いてやろうじゃないか。

 気持ちいいエッチをたくさんやらせてくれたご褒美だ。何でも言ってみろ!

「おやおや、先生、こっちを見ることしかできないようね。胸の痛みの方はどう? 今は、少しは落ち着いているようね。

 それでも、もうすぐ死ぬけどね。

 じゃあ、お母さんと交わした2つの約束のこと、今から話してあげるわね。

 さて、だから1つ目の約束だけど、お母さんはね、粋なイイ女だったの。お母さんも水商売をしていたのね。

 で、若いころは私以上のモテモテだったそうよ。お母さんも自分がイイ女であることを心得ていてね、一生そうあろうとしていたわけよ。

 そして、お母さんは、ある日、私にこう言ったの『優美、もしもウチが肉体的にせよ精神的にせよイイ女でなくなったら、ブザマになったら、その時は、どうかウチを殺してちょうだい。ただし、違法な手段で殺してはダメよ。そんなことをしたら、アンタが刑務所に行くことになるからね。だから、アンタの自慢のオツムを使って、合法的に殺してちょうだいね』とね。

 それでね、お母さんが水商売を引退して69歳になったときにね、例の息苦しくなる発作が始まったのよね。それ以前から自分の美貌の衰えに落ち込んで鬱状態だったのだけどね。

 で、その息苦しさなのだけど、最初のうちは『そのうちに治る』みたいに安易に考えていたのね。けれども、それから増々悪化していったのよ。鬱状態の方も悪化して愚痴しか言わなくなっていたわね。

 いろんな検査を受けたわ。でも、身体のどこにも異常はなかったの。

 西洋医学はもちろん、漢方とか鍼灸とか、ありとあらゆる治療を試みたのだけど、どれも効かなかったわ。

 不安神経症だの自律神経失調症だのパニック障害だの、心療科や精神科や神経科の先生たちからそれぞれに病名を付けられたのだけど、効かない薬をくれるだけで、お母さんの症状は一向に改善しなかった。しかも、症状は増々悪化していったのね。

 そして、1年が過ぎ、お母さんも私も治療を諦めたの。その挙句、お母さんに言われたの。『もう潮時よ、優美、ウチを殺してちょうだい。約束したでしょ』とね。

 そう言われても、合法的に殺す方法なんて、簡単には見つからないわよね。それで、ネットで検索するうちに、桶口先生の一族が経営する医療グループの悪評に行き着いたの。

 3チャンネルのスレに『桶口一族が経営する尽誠会という医療グループは、原因不明の症状に悩む老人が受診すると、誰彼となく認知症に仕立て上げて、さんざん薬漬けにした挙句、大量の精神安定剤で廃人にして、最後は尽誠会の老人ホームに収容し、そこで認知症老人として最期を迎えさせる』とあったの。

 それを見た私は『あっ、これだ』と思ったわ。そこで、桶口先生の心療内科クリニックを受診することにしたの。つまり、桶口先生たちの医療グループを利用して安楽死させることを思い付いたわけよ、合法的な安楽死をね。

 先生と桶口一族の尽誠会は私の期待に見事に応えてくれたわ。ただし、初診から2年もかかったのは想定外だったけどね。1年くらいで仕留めてくれていたら、お母さんもウチも御の字だったのだけどね。でも、法を犯さずに人を殺すのだから、それくらいの時間は止むを得なかったのかもね。

 そのようにして、私は、お母さんとの約束を守ることができたの。

 だから、お母さんの通夜に来てくれた先生に言ったわよね。『先生と尽誠会の皆さんには感謝している』とね。あれは本心だったのよ。そのことについては、本当にありがとうね」

 なんだよ、かなり屈折しているけど、優美の奴は、要するに、俺様に感謝しているわけか。

 だったら、どうして、この俺様が死ななければならない?

 そのあたり、文句を言いたいところだけど、もう声が出ない。

「あれっ、先生、何か言いたそうね。でも、もう、声が出ないのかな? その顔色なら、そうでしょうね。ひょっとして ・・・ 『感謝しているのなら、どうして殺すのだよ?』とか、思っていない? そりゃあ、そうよね。そこで、お母さんと交わした2つ目の約束なわけよ。それをこれから言うわね ・・・」

 優美の奴、2つ目の約束のことを話し始めるな ・・・

 なのに、もう触覚とか嗅覚とかないみたいだな。

 目が見えて音が聴こえるだけだ。

 それに、身体の血の気を一切感じなくなったな。

 その代わり、胸の痛みも感じないな。

 死ぬ間際になると、脳内モルヒネが出ると聞いていたが、あれは、本当だったな。

 人生は、そこまで残酷ではないということだろうな。

 ところで、優美の母親との約束の話、はたして死ぬ前に最後まで聞けるのかな?

 そんなこと、どっちでもいいけど、ここまで聞いたのだから、ついでだと思うのだよね。

 さあ、優美よ、もっと、とっとと話せよ。でないと、聞き終わる前に死んじまうじゃないかよ。

 ほれほれ、早く話せよ。

 もう目も開かないけどな。それでも、まだ、耳は聴こえるぞ。だから、グズグズするなよ。

「おや、先生。目が閉じちゃったわね。もう死んだのかな? いや、あと5分くらいは何とかなるでしょ。まあ、耳さえ聴こえれば十分なのだから、そのまま聞いていてね。話をなるべく、かいつまむから。

 で、2つ目の約束ね。その前に私のお母さんの昔の境遇の話をしなければね。お母さんはね、幼女から少女、そして思春期のころまでにわたり、被差別的な境遇にあったのよね。つまりは差別される立場にあったわけね。

 だから、お母さんは、自分の権利や人格が蹂躙されることに、とっても敏感だったの。

 人の権利や人格を蹂躙するもの ・・・ いくつかあるわよね。その中でも主たるものと言えば、それは不正よね。例えば、大物政治家が働く巨悪なんか、その最たるものよね。

 そんなお母さんは、私に約束させたの『不正を目の当りにしたら、決して看過しないこと、そして、不正を働いた奴に必ず落とし前を付けさせること』をね。

 だから、私は、桶口先生に落とし前を付けてもらうことにしたのよ。その落とし前の付け方とは、すなわち、先生に死んでもらうことなのよね。

 先生と先生の一族の尽誠グループは、『お母さんを合法的に死なせてくれた』という点で私に役立ってくれたわ。言ったとおり、その点では感謝しているのよ。

 でも、その手口はというと、噂通りのひどいものだったわね。

 いや、噂以上だったかもね。えげつなかったものね。

 私のお母さんという実例でとくと確認させてもらったわよ。

 先生の心療内科クリニックで偽りの診断を下し、受診した人を認知症患者に仕立て上げ、尽誠病院で認知症薬『アプセプト』と抗不安薬『ソラナックス』を大量に投与するという、まるでアクセルとブレーキを同時に踏むような無茶な薬漬け医療を施して廃人にする。そして、廃人になった高齢者を尽誠苑という老人ホームに収容して認知症患者として最期を迎えさせる。

 まさに、完璧なベルトコンベヤーよね。高齢者から医療費、入院費、介護料や室料なんかを搾り取れるだけ搾り取るという完璧な収益マシーンなのよね、桶口一族の尽誠グループというのは。

 それに、あのアプセプトという認知症薬、あれはいったい何なのよ? 3割の認知症患者の認知症の進行を最大で3年間遅らせることができるという触れ込みだけど、その実、ほとんど誰にも効かないじゃない。

 私、お母さんが老人ホームの尽誠苑にいる間にネットで調べたのだけど、アプセプトが効く認知症患者は、せいぜい、全体の1割もいないわよね。とんだインチキ薬だよね。

 それなのに、あの薬は副作用満載だよね。吐き気、下痢、食欲不振、不整脈、徐脈、頻尿 ・・・ そんなのは可愛い方で、重篤なものだと、呼吸困難、心筋梗塞、脳出血や突然死まであるわよね。アプセプトの英語名は『Upsept』だけど、後ろのpがないとUpsetになるわね。『Upset』、日本語にすると、『狂わせる』、『狼狽させる』、『心配させる』、『ダメにする』という意味ね。へへへ、それって出来過ぎよね。

 あの薬の副作用、全部で30以上も挙げられているじゃない。しかも、副作用の発生率の公表値、あれ、デタラメもいいところね。製薬会社側は重篤な副作用の発生率をどの項目も0.1パーセント以下としているけど、私が薬学部に在籍していたときに入手可能なデータの範囲内で調べた限りでは、どう考えても、副作用1項目につき3パーセント前後もあるじゃないのさ。

 それだと、副作用の項目が30以上もあるのだから、服用した患者のほぼ全員に何らかの副作用が現れることになるわよね。

 そりゃあそうだよね。アプセプトの化学構造式はサリンとそっくりだものね。ほら、昔、脱法ドラッグってあったよね。今では危険ドラッグって呼ばれているものよ。で、脱法ドラッグの化学構造式って覚せい剤と少ししか違わないのよね。昔は、覚せい剤の化学構造をちょっといじるだけで『脱法』していたわけだけど、アプセプトって、それとほとんど同じよね。

 サリンの化学構造をちょっといじっただけの薬なのに無害だと製薬会社は主張する。でも、人間の体内の化学反応って複雑の極みなのよね。だから、アプセプトが体内に取り込まれて何らかの化学反応が生じると、サリン中毒の一歩手前のような悪さをするのよね。そんなの、むしろ当たり前よね。

 なのに、アプセプトなんて薬、役所がよく認可したものよね。製薬会社は、いったい、誰にいくら渡したのかしらね? どの政治家がどれだけ貰ったのかしらね? アプセプトを処方した病院やクリニックは、製薬会社からいくら貰うのかしらね?

 医師はアプセプトを出したがるけど、そりゃあそうよね。だって、あの薬の薬価、無茶苦茶高いのだもの。抗不安薬の1回分がたったの8円なのに、アプセプトって350円もするのだもの。健康保険が適用されるケースなら、使わない医師なんかいないわよね。

 これって、つまりは、巨悪だよね、巨大な不正だよね。

 お母さんの生前にそのことに勘付いた私は、お母さんと交わした『不正を働いた奴に必ず落とし前をつけさせる』という約束を守ろうと思ったの。だから、私は、勉強嫌いだというのに、薬科大学に入学することにしたのよ。薬剤師になるためにね。

 薬剤師になったのは、もちろん、桶口先生に接近するためよ。そして、ウチは、実際にも、桶口先生に接近したわ。桶口先生のクリニックに薬剤師として就職したのよね。

 その目的だけど、それはもちろん、桶口先生に落とし前をつけさせるためよ。だって、桶口先生は、末席ながらも、巨大な不正の片棒をかついでいたのだからね。

 ならば、どうして、末席にいる桶口先生を狙ったか? 本来ならば、お役所のアプセプトを認可した役人とか、口利きをしたり圧力をかけたりした政治家とか、そしてもちろん、製薬会社や医師会のお偉方 ・・・ そういう大物に落とし前をつけさせるべきよね。

 でも、私は、薬剤師になったって、所詮は一人の女よ、一介の女性薬剤師に過ぎないわ。大物を相手にするには小さ過ぎるのよね。だから、テロリストのやり方で落とし前をつけさせることにしたのよ。

 最近、テロ事件が多いわよね。で、テロリストって、どのように攻撃する? テロリストといっても、零細な組織の構成員に過ぎないから、国家を相手に回すには小物過ぎるよね。そこでソフトターゲットというわけよ。ソフトターゲット ・・・ それは、すなわち、弱い標的よね、弱い人たちよね。弱い標的なら、小物でも十分に攻撃できるわけよ。

 医療業界のソフトターゲット ・・・ それが桶口先生だったというわけよ。つまり、医療の世界の大物の代わりに桶口先生を狙ったわけね。

 そして、その結果として、桶口先生は間もなく死ぬ。死んで落とし前をつけてくれるというわけよ。

 さて、ウチは具体的に何をしたか? それだけど ・・・ 桶口先生に接近して、先生にジャスミン茶を飲んでもらったの。

 あのジャスミン茶、シロップを入れたから甘いのだけど、どうして甘くしたのかわかる? それは、アプセプト錠の苦みを弱めるためよ。先生は、あのジャスミン茶のことを『甘いけど、少し苦みを感じて甘いばかりじゃないのだよね、だから美味しいね』って言ってくれたわよね。その僅かな苦みがアプセプトの味だったというわけよ。あっ、そうそう、抗不安薬の『ソラナックス』も混ぜ込んだわ。だから、先生は、飲むとホッとしたわけよ。

 で、どうしてアプセプトをジャスミン茶に入れたかわかる? アプセプトは認知症薬だというのにね。そして、先生は認知症患者ではなかったのにね。

 実は、アプセプトという薬はね、ご存知でしょうけど、認知症患者が飲むとね、ほとんどの人に効かないのはもちろんだけど、認知症の周辺症状が悪化してしまうのよね。

 ならば、健康な人がアプセプトを服用するとどうなるか? フフフ ・・・ それが笑ってしまうのよ。健康な人がアプセプトを飲むと、認知症の周辺症状が発現して、まるで認知症患者のようになってしまうのよ。だから、アプセプトを飲まされた先生は、怒り易くなったり、妄想したり、せん妄状態になって奇行をしたりしたのよね。

 先生は、そのような症状を認知症の周辺症状と勘違いして、自分のことを認知症患者と思い込んでしまったのね。

 だというのに、先生は、私がいれたアプセプト混入ジャスミン茶の味が気に入って、たくさん飲んでくれたわ。そして最後はアプセプト中毒になり、アプセプトの重篤副作用の一つが発現して、私の目の前で死につつある。

 さっき、先生の胸に走った激痛は、たぶん、心筋梗塞の発作を原因とするものね。

 アプセプトには、あんなに多くの副作用があるのだもの、その一つに当たる方がむしろ自然よ。

 あ ・・・ ところで、先生は、節操がないのか、婚約もしていない私のアソコの中にたくさん出してくれたわよね。ところが、一向に妊娠しないので不思議に思っていたでしょ。妊娠なんかするわけないわよ。だって、私、避妊リングを入れていたのだもの。しかも、ピルを併用していたのね。それが妊娠しなかった理由よ、わかった?

 だって、私、先生みたいなアホ医大出身のアホ医師の子供なんか欲しくないもの。アホの遺伝子なんか要らないわ。

 ところで、先生、まだ生きている? お母さんと交わした2つの約束の話は、ざっとこんなところなのだけど、何かご質問は? あ、そうか、喋れるわけないか、アッハッハ ・・・ あ、そうそう、先生をオモチャにして遊ぶのは面白かったわよ、十分に楽しめたわ、最後に感謝しておくわね

 ああ、俺様は、まだ生きているよ。なんとか最後まで聞けたようだな。でも、もう五感がない。何も感じない。

 しかし、やれやれ、この俺様をつかまえて何がオモチャだよ、ふっふ、僅かでもそのような自覚はあったけどね。


 おい、優美、この俺様をターゲットにしてくれて良かったよ。俺の遺伝子はどうせアホ遺伝子だものな。おかげで医療業界の損失が最小限で済んだよ ・・・ ハハハ ・・・  アバヨ!

「どうやら死んだみたいね。息がない。脈もない。瞳孔は? ・・・ 散大しきってはいないわね ・・・ うーん、微妙ではあるけど ・・・ いずれにせよ、ここまできたら、蘇生は不可能ね。

 よしっ、だったら救急車を呼ぼう ・・・

 ・・・ あ・・・ はい、救急車の方です ・・・ あ、住所ですか ・・・ 住所は、東阪205の ・・・ 15分くらいで来ていただけるのですね・・・

 ・・・ ん、あれっ! ウチったら、救急車を待つ間にうたた寝したのかな? もうサイレンの音が聴こえるわ。

 わっ、いやだ、ウチ、マッパじゃないのよ ・・・ そうか、先生とエッチをしていたものね ・・・ 先生に話をするのに夢中でパンツすら穿いていない ・・・ ウチのパンツ、脱いでどこに置いたのだろう? あれっ、ガウンもない! ありゃりゃ、『ピンポン』だってさ、救急隊員が到着したみたいね ・・・ だったら、パンツだけでも穿かなきゃ ・・・いやだ見つからないわ、いったいどこよっ、ウチのパンツっ!」

=おしまい=



by yassin810035 | 2020-01-30 05:07 | 悪徳医師

よほど暇な時にお読みください。笑


by タカちゃん