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患者は作るものby悪徳医師11

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第11話 旅のエピソード

 俺様と優美を乗せた豪華客船が出港した。

 出港時、船室にいた俺様は、出港するや否や、無性にエッチがしたくなり、優美に抱き着いた。

 優美は、快くかどうかは知らないが、抵抗せずに応じてくれた。

 行為中、カーテンを開けてあった船窓から夕陽が船室に差し込むと、優美はバックにするようにせがんだ。

「優美ちゃんがバックをせがむのは初めてだね」

「外の景色を見ながらしたいのよ。夕焼けが綺麗じゃない。ほら、バックにしてよ」

「わかった。じゃあ、いったん抜き出してと ・・・ どう、これでいい」

「うん、いいけど、窓のもっとそばに行こうよ、入れたままでいいから」

「え、このまま? じゃあ、このまま二人で歩こうか」

 二人は船窓の側に向けて置いておいたソファーまで歩いた。

 優美は、バックでつながったまま歩く二人の様を面白がるのだった。

「えへへ、これって二人四脚ね。私たち、なかなか、息があっているじゃないのよ。よし、この辺でいいわね、ソファーの背もたれに手をつくと船窓の外がよく見えるのよね。わあ、良い眺めね」

「じゃあ、ピストン運動を始めるからね ・・・ どう、イイ?」

「うん、初めてにしては、イイ感じじゃない。あっ ・・・ あ ・・・ あ、あかしかいきょうおおはし(明石海峡大橋)よ」

「なんだよ、それ。ダジャレ?」

「えへへ、偶然よ。それよりも、この超大型客船、明石海峡大橋の下をくぐれるんだね」

「そう、それがこの船の特色なんだよ。全長を異例に長くして、その分、全高を抑えているから、他の大型客船ではくぐれない橋でも下を通過することができるのさ」

「ふーん。先生って、意外に物知りね ・・・ お、いいね ・・・ あっ ・・・ あ ・・・あ、あわじしま(淡路島)のシルエットよね、あれ」

「ええ、ヘヘヘ、それ、完全にわざとだよね」

「フフッ、面白いでしょ、こういうエッチも」

「まあまあだね、エヘヘ」

 船は順調に航路を進み、マラッカ海峡に差し掛かった。

 で、俺様と優美は、またもや、船窓から景色を眺めながらエッチをしている。

先生バックにも慣れたわね、上手よ。いいわ、いいわよ ・・・ イイ ・・・ イ、インドネシアかな、あれ?」

「おいおい、またダジャレかよ。あれはマレー半島だろうがよ、わざとらしいんだよ」

「アハハ、気にしないで」

 てなことで、船はスエズ運河を通過して、地中海に入り、エーゲ海に達して、ミコノス島の沖に停泊した。

 超大型客船が入港できる港などないので、俺様と優美は、海上バスによるピストン輸送でミコノス島に上陸した。

 上陸して早々、俺様は、また、せん妄状態になってしまい、ミコノス島の名物ペリカンをからかい過ぎて島中を追いかけまわされてしまった。

 その挙句、ペリカンにくちばしで両足の方々を突きまくられてしまった。

 そして、我に返った。

「どうしたのだろう? 両足のフクロハギとか太腿とかがやけに痛いよ。何かに刺された感じだよ」

先生はペリカンに突かれたのよ。ペリカンをあれだけ怒らせてそれで済んだのなら、むしろラッキーだったわよ」

「そうなの? 全然覚えていないよ。また、せん妄状態だったのかなあ?」

「そうよ。ここのところ、せん妄状態が頻繁だわね」

 で、モナコからフランスに上陸して、パリのシャンゼリゼで軽食をとったのだが ・・・

「ねえ、先生、なにもクレープのことでウエイターに切れることないでしょ」

「だって、塩っぱいクレープなんて、客を馬鹿にしているよ」

「甘いわけがないでしょ。先生が注文したのは、ひき肉クレープだもの。自分が注文したものを忘れただけじゃない。せん妄だけじゃなくて物忘れもひどくなってきたわね」

 ヨーロッパに入ると、俺様の認知症とその周辺症状の進行は一段と加速した。

 パリのホテルでは、ビデにウンコをしてしまったのだが、そんなことは日常茶飯事になっていた。

 イギリスの入管で入国審査を受けたときにも、俺様はせん妄状態だった。

 で、What`s the purpose of your visit? (旅の目的は?)と入管に当然聞かれたときに、「お前の知ったことか」と答えてしまった。

 しかも、せん妄状態であったにもかかわらず、「It`s none of your business」と英語で言ってしまったものだから、俺様は別室に連れていかれて、優美に助けてもらう羽目になり、2時間かけてなんとか解放してもらった。

 で、ロンドン見物をする前に腹ごしらえをしようということになったのだが ・・・

「ねえ、優美ちゃん、観光の前になにか食べておこうか」

「そうだね。何が食べたい?」

「イギリスに美味いものなしだろ。だから特にないけど、なにかお勧めとかある?」

「そうね、定番なら、ローストビーフかフィッシュ・アンド・チップスね」

「フィッシュ・アンド・チップスってなに?」

「タラのフリッターにフレンチフライを添えたものと思えばいいわ」

「タラかあ ・・・ いまいちだね」

「なら、普通に中華でも食べる? ソーホーに中華街があるわよ」

「ああ、中華街ね。中華街なら、そこそこ美味しいだろうね」

「それこそ、そこそこらしいけど、王将の中華よりはマシでしょう」

「わかった。じゃあ、中華にしよう」

 で、俺様と優美は、ソーホーで中華を食べたわけだが ・・・

先生、それ、飲んじゃ駄目よ」

「なんで?」

「それはフィンガーボールでしょ。指を洗うためのものよ、飲み水じゃないわ」

「あ、そう、洗うの。じゃあ ・・・」

「あっ! 頭にかけちゃ駄目! 髪でも洗うつもり? ワアッ! それ、シャンプーじゃないわよ、ラー油よ!」

「え、なんだって?」

「こらっ、目を開けちゃダメッ!」

「ギャアアアアアッ!」

 店内に俺様の悲鳴が響き渡ってしまった。

 俺様の両目にラー油がしこたま流れ込んでしまったのだった。

 だから、眼の治療をするのに3時間もロスしてしまった。

 そんな風に、俺様と優美の世界一周旅行は、波乱に満ちたものになってしまった。

 それでも、なんとか、船はパナマ運河に差し掛かった。

 俺様が優美と甲板からパナマ運河を眺めていると ・・・

「ねえ、優美ちゃん。息ができない、苦しい、胸が締め付けられる、胸が痛い!」

「それって、また、認知症の周辺症状じゃないの? 先生の心臓や肺に悪いところなど、どこにもないのよ。それは、脳が勝手に創り出した症状よ。惑わされては駄目よ。いつもの症状でしょ。ほら、先生、しっかりして! ねえ、私の目を見て!」

 そう、この頃の俺様は、認知症のせいで、様々な症状を感じるようになっていた。

 しかし、実際には、俺様の身体に悪いところなどなかった。

 ないはずだった。しかし ・・・

「あれっ? 先生、なんか、いつもと違うわね。冷や汗が出ているし、顔が白いわね。船内のハウスドクターに診てもらおうよ」

「うん、そうする」

 ハウスドクターに診てもらったところ、血圧の低下はあったが、心電図に特に異常はなかった。

 それでも、俺様は、旅を続ける自信を無くした。

「ねえ、優美ちゃん」

「なに、先生」

「下船して、飛行機で日本に帰ろう」

「そうだね。このところ、先生の認知症の周辺症状が悪化しているみたいだものね。それに、旅は、もう十分に楽しんだしね。うん、わかった。日本に帰ろう」

 こうして、俺様と優美は、日本に帰国した。

 帰国してからは、俺様が千早赤阪村に所有する別荘に入った。住まいにするつもりで売却せずに残しておいたのだ。

 俺様は、この別荘を終の住処にするつもりだ。

 俺様の認知症は、「終」を意識するほどに進行が速かった。

千早赤阪村。

「あ ・・・ あっ ・・・ いいわ ・・・ 先生、いい角度で突いてくるわね。船旅ですっかりマスターしたわね、バック

「うん、バックばかりだったものね。優美ちゃんが船窓から景色を見て、で、俺は後ろからピストンしてさ。船旅以来、こればかりだね、いい加減に飽きない?」

「全然、飽きない。これが一番いい。気付くのが遅かったわね。バックだと、無理やりされている感じがして、それがなんとも良くてね ・・・ けど、ここだと景色がつまらないわね。ここからだと金剛山しか見えないよ。ねえ、どうして千早赤阪村に別荘なの?」

「この土地は桶口家の本家があった場所なんだ。祖父の代まで住んでいたのだけど、祖父が他界したので古い家屋を取り壊して更地にしたんだ。で、俺が親父から生前贈与でこの土地を貰って別荘を建てたというわけさ。だから千早赤阪村なの」

「なるほどね、千早赤阪村だなんて、突飛だと思っていたけど、そういうわけか。それにしても、金剛山以外では、ミカン畑しか見えないわね」

「でもさあ、カーテンを開けて窓の外を見ながらエッチをするというのは、どうなのかな? 見られちゃうじゃない」

「『見られちゃう』って、誰もいないじゃない」

「ミカン畑の人が見るかもよ」

「平気よ。あんなに遠いんだもの。それよりも、もっとエッチに集中してよ。ピストンが遅いわよ。振幅は十分だけどね」

「よし、スピードアップするよ」

「あっ ・・・ そうそう、その速さ。立ってするのって、いいよね ・・・ うっ ・・・」

「うん、ベッドの上でするよりも、腰を動かしやすいものね。だから、ピストン運動の振幅が大きくなるよね。こっちも、やりやすいよ ・・・ ウッ」

「『ウッ』って、もう出しちゃったの?」

「ウウッ ・・・」

「ねえ、先生、そんなに体重をかけないでよ、重いでしょ」

「ウウウッ ・・・」

「お、重い、重いよ先生 ・・・ 先生、あれっ? 先生 ・・・ 先生ったら、どうかした?」

「アアッ ・・・」

「変な方向に体重をかけないでよ、転んじゃうじゃない。ワアッ! ・・・ ほら、転んじゃったじゃない ・・・ エッ! 先生! ・・・ ねえ ・・・ 先生 ・・・どうしたの? 気を失ったの? ねえ、ほら、起きてよ!」

「ゆ ・・・ 優美ちゃん ・・・」

「気が付いたみたいね。どうしたの、大丈夫?」

「胸が痛い ・・・ 息が苦しい ・・・ アアッ ・・・ 痛い ・・・ 痛い ・・・」

「これは、認知症のせいじゃないわね。顔の血の気が引いて、冷や汗をかいていて、唇が紫色ね。どうしよう? ねえ、桶口先生、痛いって、どう痛いの?」

「ま ・・・ まるで ・・・ 火鉢の火箸で胸の中をかき回されているようだよ ・・・が ・・・ 我慢できない ・・・ い ・・・ いつもとは違うよ ・・・ きゅ ・・・ 救急車 ・・・ きゅ ・・・ きゅ ・・・」

「確かに、これは尋常ではないわね。わかったわ、救急車ね、今すぐ呼ぶから」

「た ・・・ た ・・・ 頼む ・・・」

「もしもし ・・・ あ ・・・ あの東阪の桶口と申しますが ・・・ え ・・・ あ ・・・はい、消防車ではなく救急車の方です ・・・ あ、住所ですね ・・・ 住所は、東阪205の ・・・ で、どれくらいで来ていただけますか ・・・え ・・・ 15分 ・・・ あ、はい、わかりました」

「ど ・・・ どれくらいで来る?」

「15分だって、大阪市内よりも遅いわね。でも、しょうがないよ、田舎だもん」

「・・・ うん」

「どう、救急車を待っている間にジャスミン茶を飲まない?」

ジャスミン茶 ・・・・ こ ・・・ こんなときに?」

「そうよ。ジャスミン茶で始まったから、ジャスミン茶で終わるのよ」

「意味が解らないよ」

「そうでしょうね。でも、今いれるからね」

「いらない」

「そうよね。今は、いらないわよね。でも、いれるわ」

「どうして?」

「どうしてでもいいでしょ」

25分後。

「ゆ ・・・ 優美ちゃん ・・・ 救急車 ・・・ 来ないじゃないかよ」

「うん、来ないわよ」

「なんで?」

「呼んでないもの」

「嘘だ、さっき呼んでいただろ」

「あれは、呼ぶフリをしたのよ」

「なんで、そんなことを?」

「秘密はジャスミン茶にあるのよ」

ジャスミン茶?」

「そう、ジャスミン茶。ほら、はいったわよ、ジャスミン茶。このジャスミン茶が先生の命を奪うのよ」

「それは ・・・ ど ・・・ どういう意味だよ?」

「見たところ、死ぬまでには、まだ、時間がありそうね。いいわ、ゆっくりと説明してあげる」

「・・・ ウッ ・・・ 苦しい ・・・ そんなことより ・・・ 救急車 ・・・ 早く ・・・」

「救急車? もちろん、呼ぶわよ。先生が意識を失って、十分な時間が経ってからね」

「ど ・・・ どうして?」

「先生に死んでもらうからよ」

「なぜだよ?」

「それはね、死んだお母さんと2つの約束をしたからよ」

約束 ・・・ 2つのって ・・・ 母親を死なせた復讐じゃないのか?」

「あ、やっぱり先生たちが死なせたのね。まあ、そんなこと、とっくに知っていたけどね。でも、復讐じゃないわ。2つの約束を守るためよ。それはどんな約束か ・・・ これから、教えてあげるわね。まず、1つ目の約束はね ・・・」

=続く=




by yassin810035 | 2020-01-29 05:48 | 悪徳医師

よほど暇な時にお読みください。笑


by タカちゃん