人気ブログランキング | 話題のタグを見る

患者は作るものby悪徳医師7

患者は作るものby悪徳医師7_e0406636_07565680.jpg
第7話 出しても、出しても、できない

 山田優美が俺様のクリニックにやってきてから3ヶ月が過ぎた。

 俺様は、今日もまた、彼女にジャスミン茶をねだってしまった。

 それは、もはや日課になっている。

 ジャスミン茶をいれたティーカップがウェッジウッドなら、それはエッチNGのサイン、そして、ロイヤルドルトンならエッチはOKだ。

 今日もジャスミン茶を彼女にねだったと言えば、エッチをねだっているように聞こえるだろうが、そうとは限らない。

 彼女のいれるジャスミン茶は毎日飲みたい美味さなのだ。

 おや、ノックだ。ジャスミン茶を持ってきてくれたようだ。

「先生、おはようございます。はい、朝のジャスミン茶」

「ありがとう。あ、このティーカップ、今日もOKね、なんだか毎度で悪いね」

「気持ちいいことですからね、可能なら毎日でもアリですよ」

「え、じゃあ、私のナニでも喜んでもらっているの?」

「うふっ、とにかく、ここは職場で、まだ朝ですよ、では、私はこれで ・・・」

 あ、行っちゃった。毎度してくれるわりには、いつもそっけないな。

 そりゃあ、そうだな。ここは確かに職場だものね、彼女が正しいよ。

 それにしても、このところ、毎回エッチOKだな。

 これなら、いつプロポーズしても受け入れてくれるだろうな。

 けど、恥ずかしながら、この俺様は毎度、ゴムなしで出してしまう。

 今日までにもう何回、中に出したことか?

 あれだけしたのだものな、危険日もたくさんあったに違いない。

 しかも、やりだしてから3ヶ月にもなる。

 ということは、できても不思議ではない。不思議どころか、できちゃう方がむしろ自然だよ。

 それなのに、その兆候がまったくない。

 彼女、ひょっとして、不妊症か?

 俺様としては、子供なんか別に欲しくはない。

 それでも妊娠のことが少しは気になる。

 ま、いいか。結婚して3ヶ月経っても子供ができない夫婦なんか星の数ほどあるのだから。

 そんなの問題でもなんでもない。

 けれども、妊娠してくれれば、プロポーズをする良いきっかけになるのだけどな。

 急ぐ必要もないから別にいいけどさ。

 それはそうとして、なんだか、最近、身体がだるいな。

 ひょっとして、エッチのし過ぎかな?

 そういえば、このところ、出勤日は毎晩、彼女とエッチをしているものな。

 ついつい夜更かしもしてしまうしな。

 身体がだるいとその分だけ余計に彼女のジャスミン茶が飲みたくなる。

 あれを飲むと、身体のだるさが和らぐものね。

 そんな物思いにふけっていると、薬局に入ったはずの山田優美が少し慌てて俺様の診察室に入ってきた。

「先生、鍵、どこにしまいましたか?」

「どこにって、いつものところでしょ」

「ないから聞いているのでしょ」

「ないって、劇薬保管庫の鍵のことだよね?」

「もちろん、そうですよ。いつものところにないなら、先生がご存知かと思ったのですけどね」

「いや、私は、鍵には触ってないよ」

「そうですか。困りましたね。じゃあ、そこらを探してみます」

「そうだね。今日のところは鍵を使う用事はないけど、大切な鍵だからね。このまま放っておくわけにもね」

 薬剤師の山田優美は、それから、業務の合間を縫って、その鍵を1時間ほど探したが出てこなかった。

 仕方がないので、手隙のスタッフが総出で鍵を探したが、鍵は午後に入っても出てこなかった。

 そして、女性看護師が俺様に冷たい飲み物をいれてくれようとして、俺様の診察室の冷蔵庫のフリーザーのドアを開けると ・・・

「え、なにこのタッパ? 誰が入れたんだろう? あっ!」

 その看護師が大きな声を出したので、俺がそれに反応して振り返ると ・・・

「先生、タッパに鍵が入っていますよ!」

「え、鍵? なんの鍵?」

「さあ? ほら、これです、見てください」

「あっ!」

 タッパの中には探していた鍵が入っていた。

 しかも、その鍵は、タッパに張られた水ごと凍りついていた。

 俺様には、なにがなんだかわからなかった。

「これ、誰かのイタズラかな?」

「理由は知りませんが、先生がこのようにしたのではないのですか?」

「バカ言うなよ。こんなこと、するわけがないだろ! どうして私がカギをタッパに入れてフリーザーで凍らせるのだよ」

「じゃあ、誰の仕業でしょうね?」

「知らないよ、そんなこと。あ、そうだ、この診察室には患者様の様子を後で確認するためのカメラがあるよね。そうだ、そうだ、その録画があるはずだよ」

「あ、そうですね。レコーダーはこの部屋にあるのでしょ?」

「うん、この部屋にある。よし、確認してみよう」

 その女性看護師と俺は録画を確認してみた。

 俺様の診察室には監視カメラがある。

 ただし、防犯カメラではない。

 俺様が患者の診察をするところを録画しておいて、その映像を後の治療に役立てるためのものだ。

 しかし、その用途は表向きのものに過ぎない。

 この監視カメラは、要するに、ペテンの小道具なのだ。

 俺様がでっち上げた嘘の症状を患者に実感させるための工夫なのだ。

 例えば、「ほら、私がこの話題に触れると、あなたの顔面にチック症状が発現するでしょ」みたいに、たまたま見られた現象を精神病とか神経症とかに仕立て上げて、その偽の症状を録画によって患者に納得させるというわけだ。

 防犯カメラではないのだが、ビデオレコーダーには防犯カメラ用のものを使用している。

 一週間分の映像が自動的に録画される仕様のレコーダーだ。

 サーチが簡単なレコーダーなので後で再生するときに手間取ることはない。

 さて、凍った鍵を見つけた女性看護師と俺様は、収録された映像をチェックしてみたわけだが ・・・

「鍵がないと騒ぎ出したのが今朝だから昨日の午後から今朝までの映像をチェックしようか。超早送り再生をするから、君も私と一緒に確認してね」

「わかりました」

「では、始めるね」

「・・・ あ、これは、先生の後姿ですね。午後10時ごろですね ・・・」

「うん、カルテの整理をしていたんだ」

「そうですか、先生も遅くまで大変なんですね」

「それほどでもないよ。それに、自分の経営するクリニックのことだしね」

「あ、先生はノドが渇いたのかな? 冷蔵庫の前に立っていますね。え! 先生がタッパを左手に ・・・ あ、それをフリーザーに入れたわ ・・・ タッパの蓋の色は緑でしたよね、私がさっき見つけたタッパと同じ色ですよ」

「え! それって私が犯人ということ? タッパに水を張って、そこに鍵を沈めてフリーザーに入れたってこと? あり得ないよ、そんなことをする理由がないもの」

「それはそうですけど。でも、どう見ても同じタッパですよ」

「じゃあ、今朝までの残りのビデオも見てみようよ。他にそれらしい場面がなければ、私の仕業ということだろうけど ・・・」

「・・・ 今朝9時の分まで見終わりましたよ。それらしかったのは先生が映っていた場面だけでしたね」

「確かにね。じゃあ、私の仕業ということか。どうしてこんなことをしたのだろう?」

「先生は、最近、疲れた顔をしておいでですよ。疲れているからですよ。いいじゃないですか、鍵くらい。氷を溶かせばいいだけのことですよ」

「まあ、そうだけどね。君、他のスタッフには言わないでね。強いて秘密にとは言わないけどね、みっともいいことじゃないから」

「わかっていますよ、ご心配なく」

 すると、誰かが俺様の背後から声をかけた。

「先生、先月度の保険の点数のことですけど ・・・」

「え ・・・ お、木下さんか ・・・ ノックぐらいしてよ」

「しましたけど、返事がないもので ・・・」

「まあ、いいよ、で、点数がどうしたって?」

 背後から声をかけたのは会計の木下という男だ。几帳面で正確無比な37歳の男だ。医療事務の責任者だ。

「いや、だから、先月度の ・・・ あれっ、なんですか、このタッパの氷? あ、タッパの中に何か入っているな ・・・ え、鍵じゃないですか ・・・ 探しているやつですか?」

「う、うん、そうなんだ。ねえ、木下さん、点数の件は後回しにして、まずは、その氷、溶かしてくれる。溶けたら、その鍵を山田先生に渡してくれる」

「あ、はい。でも、どうして、こんな ・・・」

「そんなこと、いいから、とにかく溶かしてよ」

「はい、わかりました」

 で、俺様はその女性看護師に持ち場に戻るように言った。

 すると ・・・

バチバチバチッ

「なんだ、今のスパーク音? ・・・ あっ! おい、木下、スイッチをオフにしろ!」

「え、あ? ・・・ え?」

「バカッ! 電子レンジのスイッチだよ! 爆発するぞ!」

「あっ、そ、そうか、はい今すぐ ・・・」

 木下はタッパを電子レンジに入れて、氷を溶かそうとしたのだった。

 俺様はそのことに何故だか無性に腹が立った。

「このボケッ! 電子レンジに金属を入れるなんて、鍵だぞ、金属そのものじゃないか。そんなもの、電子レンジなんか、皿の模様の金属部分でもバチバチいうのに、まして鍵なら爆発ものだぞ! だから文系の奴は嫌いなんだ。まるで猿だな。理系なら間違ってもしないことを平気でしやがる。まったく、このバカたれっ!」

 そのように激怒してしまったのだが、ビデオを一緒にチェックしくれた女性看護師の顔をふと見ると、唖然とした表情になっていた。彼女はどう見ても俺の激怒に驚いていた。

 そうだ、普段の俺様はインチキ金満医師ではあっても、激怒なんかしないのだ。

 それは、もちろん、俺様が人格者だからではない。それは、単に、俺様に怒る理由など存在しないからだ。

 なにせ、この俺様は、ペテン診療でぼろ儲けした金で上等な車に乗り、上等な女を抱き、特上の料理を食す。そんな俺様に激怒する理由などあるわけがないのだ。

 ところが、今、たかが鍵と電子レンジのことで激怒してしまった。

 女性看護師が驚くのも無理はない。

 そして、他ならぬこの俺様も自分自身の激怒に驚いてしまった。

 しかし、その場は、すぐに詫びて何とか取り繕った。

 そして、夜になった。

 今夜はエッチOKの日なので、俺様と山田優美は、当たり前のように、ラブホのリバーサイドにいる。今夜の部屋もロイヤルだ。

「先生、聞いちゃったわよ、凍った鍵のこと」

「やっぱり聞いたか。そりゃ喋るよな。鍵をフリーザーで凍らせたのだからね」

「気にすることないわよ。このところ、疲れた顔をしているもの。きっと疲労のせいよ。というわけで、今日は気分転換しようか。お風呂に入ろう!」

「え、いきなりしないの? 事の前に風呂に入るなんて初めてじゃない」

「いいじゃない。本来はそれが当然なんだし」

 そして、俺と優美は風呂に入った。

 ラブホとはいえ、一番上等な部屋だけに、かなり広い浴室だ。

 湯船だけでも二畳ほどもある。

 かけ湯をして体を洗うと、優美が安全剃刀を手にした。

「お、髭を剃ってくれるの?」

「え、髭? 髭なら自分で剃ってよ」

「じゃあ、自分のムダ毛を処理するの?」

「いえ、先生の毛を剃るの?」

「髭じゃなくて?」

「うん、髭じゃなくて」

「じゃあ、どこの毛?」

「下の毛」

「え、俺のアンダーヘア!? おい、やめろよ、ハイレグ水着を着けるわけでもないのに剃る必要なんかないだろ!」

「要・不要の問題じゃないわ、気分転換よ。それに、先生を攻めるときに舌にさわるのよ、先生のヘアは硬いからね、剃った方が攻めやすいでしょ」

「そんな気分転換なら要らないよ! お ・・・ おい ・・・ や ・・・ やめろよ ・・・マジかよ!?」

「うるせえっ! じっとしていろよ、皮を切っちまうだろうがっ!」

=続く=




by yassin810035 | 2020-01-25 04:32 | 悪徳医師

よほど暇な時にお読みください。笑


by タカちゃん